

継承と創造
― 「未来の会」と新時代を創る ―
医療法人芳精会 京ケ峰岡田病院
(愛知県額田郡)

愛知県
額田郡
お話しいただいたのは…
院長 岡田 京子 様
看護局 局長/総師長 平岩 政子 様
看護部 部長/副総師長 角谷 弘子 様
リハビリテーション部 部長 竹本 律子 様
医療事務部 部長 筒井 尚丈 様

芳精会京ケ峰岡田病院における組織づくりの実践は、2021年から始まりました。集まったのは、院長(当時は副院長)を中心に各部門の部長・次長など次世代を担う幹部たち。「未来の岡田病院を考える会」として、毎月3時間以上の対話を重ねました。この対話から病院の行動指針10か条が生まれ、継続的な役職者研修もスタート。病院の年度方針も「未来の会」で設定されています。6年目となるこの活動について、岡田院長と、未来の会から4名のメンバーにお話をお伺いしました。

京ケ峰岡田病院のミライづくり
ファシリテーターとして伴走させていただいたミライバの視点から、未来につながる組織と人の実践活動の一部をご紹介します。
(2026年5月時点の状況をもとに執筆)
1 未来の岡田病院を考える会
2021年10月、岡田副院長(現・院長)とともに6名のメンバーが会議室に集まりました。「未来の岡田病院を考える会(以下、未来の会)」の始動です。この日から毎月1回、診療の落ち着く土曜日の午後に3時間ほど集まるのが未来の会の定例となりました。
きっかけは、近い将来に迫った事業承継。理事長であるお父様から、いずれは病院を引き継ぐことが決まっていました。当時から岡田先生は、これからの変動が激しく不確実な時代、お父様と同じやり方で経営を成り立たせるのは難しいだろうとお考えでした。そこで、新しい流れを創り出すために、次世代幹部の育成と、組織全体のシステムの見直しをねらい、未来の会を発足されました。
未来の会はまず、私たちの病院を見つめ直す時間からゆっくりと始まりました。今の病院の現状、私たちの強み・弱み、これからどうなっていくのが望ましく、どうなってしまうのを避けたいのか……。丁寧に対話しながら、未来の会がこれからの病院経営の鍵となっていくこと、そしてここに集まったメンバーがこれからの病院の中心となっていくことを、一人ひとりが少しずつ確かめているようでした。
対話の中で徐々にテーマが絞られ、病院の行動指針を設定することになりました。行動指針が決まった後は、それを病院全体に広げていくための役職者研修を始めることに。役職者研修をするならば、それぞれの役職の役割基準が必要ではないか。研修テーマも、役職者が必要としているテーマにしてあげたい――。そのようにして、未来の会によって着々と組織の形が整理されていきました。
役職者研修は対話型に。そこで聴かれた役職者の声をもとに、次年度の病院方針を決めることになりました。病院方針の内容から、その発表形式、それをもとにした部署目標への落とし込み方も、未来の会で話し合われました。やってみた反省を次の一年に活かし、今も目標シートの設計や研修形式などに改善を重ねながら活動が続いています。
とにかく未来の会では、徐々に活動の幅を広げながらも、細やかな点まで丁寧に扱われるのが特徴です。未来の会メンバー一人ひとりが現場のこと、病院のことを真剣に考えているからこそ。どのような工夫をしたら、もっと病院が良くなるのか。真正面から向き合って今年で6年目、今はメンバーも増え未来の会は岡田院長を含め総勢11名となっています。

2 行動指針10ヵ条
未来の会1年目に策定された病院の行動指針は、「私たちは、京ケ峰岡田病院の職員です。」から始まります。きっかけは、未来の会メンバーの一言――「地域の集まりで、岡田病院の〇〇ですと自己紹介すると、皆が病院のことを知ってくれている。そういう病院で働けていることを誇りに思っています」という言葉だったかと記憶しています。
一方で医療従事者は、それぞれの職種に帰属意識は持つが、勤務先に帰属意識を持ちにくいと言われます。看護師であること、薬剤師であること、それも大切ですが、病院の一員として皆が同じ目標に向かい協力しあう仲間であることも大切にしてほしい。その思いを込めた一文です。
2022年春、行動指針として定められたのは、以下の10ヵ条です。
私たちは、京ケ峰岡田病院の職員です。
Ⅰ.私たちは、現状に満足せず、変化・進化を続けます。
Ⅰ-1) 私たちは、目標を明確にして共有します。
Ⅰ-2) 私たちは、自分の行動の目的を常に意識し、行動します。
Ⅱ.私たちは、活気のある職場にします。
Ⅱ-1) 私たちは、良い情報も悪い情報も早く報告します。
Ⅱ-2) 私たちは、何かあってもへこたれない、強い仲間です。
Ⅲ.私たちは、安心できる職場にします。
Ⅲ-1) 私たちは、お互い支えあえる仲間です。
Ⅲ-2) 私たちは、自分を大切にします。
この行動指針の発表会を役職者研修の初回と位置づけ、いまだ日本中がコロナに苦しめられていた2022年夏に実施しました。未来の会メンバー全員が壇上に上がり、一人ひとりの言葉で(ときには歌で)、行動指針に込めた思いやその意味を話されました。こんなときだからこそ、全員がひとつになって協力しあうことが大切。そのメッセージが強く伝わる会となりました。

3 役職者研修
この初回を皮切りに、師長クラス、主任クラス、副主任クラスと3階層に分けて役職者研修が始まりました。時間は、未来の会が開催されている土曜日の午後。前半90分・後半90分の二部制とし、前半に師長クラス、後半に主任クラス、副主任クラスは来月の前半に…と順番に実施することになりました。
役職者は十把一絡げに、まとめて研修してしまうこともできたかもしれません。しかし、これまで役職者研修はほとんど行われていなかったなか、上司や部下と一緒になると緊張してしまうかもしれない。主任どうし、副主任どうし、横のつながりを持ち、助け合いながら役職者としてのリーダーシップを発揮できるようになってほしい。その思いで、同じ立場の役職者どうしが職種を越えて対話できるように工夫されました。
研修設計にも、随所に未来の会のきめ細やかな工夫が光ります。まずは楽しく、役職者って悪くないねと思えるような場にしたい。気を置かずに話せる仲間になってほしい。そして、徐々に研修に慣れてきたら、病院経営にも関心を持って考えられるようになってほしい。全体に対して自分の意見を発表する経験もしてほしい。このように、研修の後に短時間でも未来の会で集まり、ふりかえりと次へのテーマ設定をしながら進んでいます。

4 年度方針と部署目標
2023年から、未来の会で年度の病院方針を設定することになりました。各部署の目標もその方針に基づいて設定してもらいます。
初年度の病院方針を決めるにあたっても丁寧なプロセスがとられています。まずは役職者研修で、現場職員から匿名で集められた「エピソード」を読むことから始めました。エピソードは2種類。一つは、うちの病院で働くなかで嬉しかった・ありがたかったエピソード。もう一つは、うちの病院で働くなかで悲しかった・残念だったエピソード。患者さんやご家族の言葉、上司や部下との関わり、自分自身のやりがいや不安。さまざまな人生の一場面が寄せられました。
研修ではこれらのエピソードをじっくりと読んだうえで、役職者が対話しながら現場に思いを馳せ、現状の自部門の課題や来年取り組みたいテーマを書き出していきました。現場職員の視点、役職者の視点を取り入れたうえで、未来の会でさらに話し合い。今の病院全体に問われていることは何か、今年度こそ私たちが重視することは何か、そして、病院方針として皆を力づけるようなエネルギーを持った言葉は何か。ちょっとした言葉選びにもこだわりながら、初となる病院の年度方針を決定しました。
現在は、4月には各部署が一斉に目標設に向かって走り出せるよう、前年度10月頃から役職者研修で年度ふりかえりを始め、1月には未来の会にて翌年度の病院方針が決定、2月には役職者へ病院方針を発表し、年度末までに各部署の目標設定と共有が完了するようなサイクルが回っています。
病院方針や部署目標は、つくることが目的になっては本末転倒。その年の活動を方向づける重要な道標だからこそ、設定にも発表にも手間をかけ、心を込めて取り組まれています。
(2026年5月5日)

