top of page


医療福祉のコロナ禍を越えて
― 皆と描く新たな道筋 ―
医療法人恵仁会 セントマーガレット病院
(千葉県八千代市)

千葉県
八千代市
お話しいただいたのは…
事務長 朝戸 晴美 様
地域連携室 室長 安達 直弘 様

2024年夏から「組織開発活動」をスタートした、恵仁会セントマーガレット病院。7名のコアメンバーを中心にまず管理職から対話の場を始め、全職員に向けた行動規範を策定。さらに主任クラスの対話型研修も行いながら、少しずつ院内に輪を広げています。そのきっかけは、コロナ禍に起きた院内の異変でした。その時どのような体験があり、どのような想いを大切にしていたのか――。組織開発の中心となっている朝戸事務長、そしてコアチームから安達室長にお話を伺いました。

セントマーガレット病院のミライづくり
ファシリテー ターとして伴走させていただいたミライバの視点から、
未来につながる組織と人の実践活動の一部をご紹介します。
(2026年3月時点の状況をもとに執筆)
1 行動規範の策定
セントマーガレット病院の行動理念は、「真心と手のぬくもりと微笑みを…しばし癒やし時に支え常に慰む」。まだ現代ほど医療が発展していない時代、治療によって癒せることばかりではありませんでした。それでも常に心を慰める(患者や家族に寄り添う)ことは大切にしたい。そして真心のこもった笑顔や手のふれあいとぬくもりは、人の心を深く繋げ合う。身体と心の両方を受け止める病院でありたいという想いが込められています。
この行動理念に満ちた病院を、一人ひとりがどう作り出していくか? そのような問いから始まり、管理職20名以上による5ヶ月(5回)の対話をもとに、全職員で実践する具体的な「行動規範」をまとめあげました。
まずは一人ひとり意見を出し合い、私たちセントマーガレット病院の目指す未来を描き出します。「ワンチーム」「初心を忘れない」「信頼と安心で選ばれる」など、多様なキーワードが挙げられました。そのうえで、この未来に歩みを進めていくために、私たちが向き合うべき課題やテーマを考えます。簡単な問いではありませんが、それぞれが感じている問題意識や現実に向き合いながら、たどり着きたい姿を脳裏に描き未来志向の対話を重ねました。
今の私たちにとって大切なポイントがある程度明確になってきたところで、職員全員が日常的に取り組める行動として、さらに具体的にイメージを言葉にしていきます。そのプロセスの中では、「今日入ってきた職員にも分かるように、シンプルで当たり前の内容」であることが重視されました。聞こえの良い言葉を並べるのではなく、新人から幹部まで全員が一丸となって実践できることを大切にしています。
そして完成したのが、以下の行動規範です。
医療人としての初心を忘れません
01.自分を大切にする
心も体も元気な自分でいます
02.仲間を大切にする(相互理解)
職員全員が、信頼と協力でつながる一つのチームです
・笑顔で自分から挨拶します
コミュニケーションの第一歩、病院全体が明るくなります
・「ありがとう」を言葉にします
感謝の気持ちから、より良いチームワークが生まれます
03.個人の成長を組織の成長につなげる
・変化を恐れずチャレンジし続けます
環境は常に変化します
様々な視点で考え、新しい方法を取り入れます
・何事もあきらめません
あきらめない姿勢を持ち、できない理由を探すのではなく、できる方法を考えます
この行動規範は名刺サイズのカードに印刷され、全職員に配布されました。カードには、「2025年3月 管理職一同制定」の文字も。行動規範を広げていく管理職の皆さんに、皆で決めたときの気持ちをどうか忘れないでほしいという願いが込められています。

2 管理職の対話の場づくり
行動規範を考え始めてから決定までは5回の対話を要しましたが、それより以前に、管理職全員による対話の場を3回設けていました。忙しい業務の間を縫って、月に一度、3時間(14:00~17:00)の対話会です。
この3回は、お互いに管理職としての不安や悩みを打ち明けあったり、少人数グループでお互いの仕事に対する想いや価値観を聴きあったりと、相互理解を深める場となりました。「〇〇科長って、こんな人だったんだ」「そういえば私、入職した頃はこんなふうに考えていたなぁ」。相手に対する見え方も、自分自身の仕事に対する向き合い方も見つめ直した期間でした。
これまでセントマーガレット病院では、多職種管理職が集まる定例会議は行っていたものの、こうしてそれぞれの人となりや気持ちを丁寧に聴く場はありませんでした。場を重ねるなかで顔の見える関係性が徐々に作られ、徐々に職種を越えた業務相談が自然とされるようになるなど、声をかけあえる雰囲気にもなっています。管理職たちが集まる場で、本来大切にしたかった率直な想いを話せる土壌が整えられていったことが、管理職一人ひとりが自部署の枠を越えて法人全体を考えるという行動規範の対話に繋がっていきました。
行動規範の策定後には、さらにテーマを設けて意見を交わしあったり、行動規範の実践状況や部署に対する働きかけの様子をシェアしあったりしています。2026年現在も、主任クラス研修と並行して対話の場を続行。毎回の主任クラス研修後に提出される「ふりかえりシート」には丁寧に上司コメントも入れていただくなど、あたたかく前向きに取組みを支えてくださっています。

3 主任クラスの対話型研修
行動規範が完成し、管理職の対話も深いものとなり、徐々に「場があること」に頼らない協力連携が進んできた頃、次なるテーマとして主任クラスの研修を企画することとなりました。企画にあたっては、主任クラスの皆さんにどのような学びや体験をもたらしたいか、やはり管理職の皆さんから意見を募りました。「主任にも横のつながりを」「役職者であることに自分なりの希望を持ってほしい」――、自身も主任・副主任として苦労した時代があったからこその願いをもとに、研修が始まりました。
研修参加者は30名。各部署から参加してもらいたい主任・副主任に加え、役職者候補のリーダークラスも含めて数えると総勢30名。平日午後に3時間も現場の主要メンバーが集まれるだろうか?という懸念もありながら、検討のすえ全員で学びの旅に漕ぎ出すことが決まりました。
初回の研修テーマは、行動規範。主任クラスを前に改めて行動規範の意味や背景を説明いただきました。作って終わりにせず、本当に全員で実践していくという決意が伺えます。当時は行動規範が周知されて約5ヶ月が経ったタイミング。主任クラスの皆さんも、自分自身がどのように行動規範に取り組んでいるか、部署に対してどのように行動規範を広げているか振り返り、次のアクションを考えました。
現在も、月に一度の研修が続いています。活発に話し合い、率直に思いや考えを交わし合う姿は、まさにこれからの時代を担うリーダーたち。数回に一度、管理職との合同研修では約50名が会議室に集まり、対話しながら互いに学びと気づきを深めています。上司がいても思いを話せる、セントマーガレット病院の風通しのよい風土が表れています。
4 コアチームのバックアップ

行動規範、管理職の対話、主任クラス研修といった多様な取組みの裏には、事務長を中心とした7名のコアメンバーの存在がありました。セントマーガレット病院の組織開発活動を知るには、このコアメンバーの方々を置いては語れません。
7名のコアメンバー(朝戸事務長、小野看護部長、安達室長、小柴事務次長、朝日科長、朝戸課長、清水科長)は組織開発活動が始まる以前から、法人のミッションや理念について話し合うメンバーだったそうです。自部署の視点を超越して、法人の視点から未来を考え、皆に働きかけてくれる頼もしい仲間。
組織開発活動としてまず管理職の対話の場が始まってからは、3時間の対話会の後に毎回、コアメンバーとミライバで打合せを行っていました。コアメンバーから見て今回の場はどうだったか、次回はどのようにしたいか、次回までの間に院内でコアメンバーから働きかけることはないか、〇〇さんにこんな変化が見えて嬉しい……、あたたかくも真剣な眼差しから、打合せはときに夜遅くに及ぶことも。
さらに、対話や研修外の機会でも管理職や主任クラスに声をかけたり、他部署の様子を積極的に見に行ったりと、コアメンバーが精力的に動き、全体の変化を後押ししてくださいました。
2024年夏に管理職の対話がスタートしてから、行動規範を策定し、主任クラス研修に展開するまで1年。1年間でここまで進むことができたのは、こうしてコアメンバーの皆さんが真摯に向き合ってくださったからこそでした。組織の変容は一人ではなし得ないと言います。最初に変化の火を起こした事務長のもとに、強い絆と意欲で結ばれたコアメンバーがいたことは、セントマーガレット病院の未来を大きく変えたのではないでしょうか。
(2026年3月6日)

bottom of page
